TOEICという英語資格があります。
国際的なコミュニケーションの場で必要とされる英語能力を評価する民間資格です。試験内容は全200問で、リスニングが45分で100問、リーディングが75分で100問の合計2時間で解き切るマーク式の試験です。
TOEICは、社会人の『ビジネスに特化した英語力』を公平に測定する指標として非常に人気があり、企業にお勤めのビジネスマンは勿論のこと、現在では、下は高校生から上は大企業の部長まで受験する英語資格になっています。
TOEICは、合格不合格で判断される単純な試験ではなく、自身の英語力に基づいて10点~990点の間でスコアが出るようになっています。分かりやすく言うと、ボーリングのスコアのような感じで、英語力が高い(ボーリングが上手い)人ほど高得点が出る仕組みになっています。
本日はTOEICの問題形式の変更についてお話します
TOEICは、1979年に第1回公開テストが実施され、過去2度の改訂を経ています。
今年で20周年ということで、受験会場では20周年を意識した紙も配られています。
1回目が2006年、2回目が2016年5月29日の第210回公開テストから導入された所謂『新形式』です。
この2回目の改訂からだいぶ時間が経った現在でも、多くの方がこの改訂の事実を知らなかったりします。昔TOEICを受験してそれっきりのご年配の方であれば、『あれ、こんなにTOEICって難しかったっけ?』と思うでしょうし、ごく最近になってTOEICに参加し始めた方であれば、『いや、最初からこんな感じで難しいわ』と感じていることでしょう。
事実、TOEICは英語学習業界の時代の流れに合わせて、難しくなっていっています。所謂『難化』というものです。今回の2016年の新形式への移行は世間でも非常に話題になり、10年ぶりの改訂ということで英語業界に与えるインパクトもかなり大きいものでした。
今回は、そんな旧形式と新形式のTOEICの違いを考察し、過去2度の改訂を経た問題形式を徹底比較することで皆様のこれからの英語学習の参考にして頂くと共に、問題作成者であるETSの意図にも迫ろうと思った次第です。
2006年の改訂では何があったのか
2016年の改訂に入る前に、その前提として2006年に行われた改訂について言及したいと思います。
1回目の2006年の改訂では何があったのでしょうか。今回の記事におけるメインは2016年の改訂にフォーカスを当てていますので、さらっと解説します。1回目の改訂では、より実用的な英語を出題して実践的な英語能力を評価したいという思いがあったものと考えられます。
リスニングセクション
Part1
【問題数】20問→10問
【変更点】問題数の減少
まずはPart1からみていきましょう。なんと最初の頃はPart1が20問もあったということに驚く方もいらっしゃるかもしれません。
パート1が20問とかボーナスステージやん!
管理人的にはPart1の写真描写は全問正解すべき場所だと思っているので、その問題が20問も続くなんてもはやパラダイスかと思います。あまりに簡単であったということでしょう。初回の改訂で大幅に問題数が削られ、なんと半分になってしまいました。
Part2
【問題数】30問→30問
【変更点】なし
Part2に関しては問題数の変更はありませんでした。
基本的にこの頃は、所謂『そらし』問題が少なかったので、最初の疑問詞をしっかり聴いておけば正解できる問題が多かったです。すなわち、得点源であったということです。
Part3
【問題数】30問→30問
【変更点】会話文の長文化と設問のナレーターによる読み上げ
Part3に関しては、問題数の変更は特にありませんでした。しかし、会話文が長くなったのと、以前は読み上げられなかった設問がナレーターによって読み上げられるようになりました。
これは賛否両論ありますが、設問を読まなくても音声で教えてくれるのでその点は楽と言えば楽です。ただ、先読みによって気が散ってしまうという方もいるかもしれません。個人的には読んでくれても読まなくてもどちらでもいいです。
Part4
【問題数】20問→30問
【変更点】問題数の増加と設問のナレーターによる読み上げ
Part4は問題数が増加しました。Part1で減少した10問がここに来ているわけですが、Part4の10問増加というのは結構キツいのではないかなと思います。また、Part3同様に設問がナレーターによって読み上げられるようになりました。
part4というのは、コツを掴んでしまえばある意味得点源ですが、初心者にとっては結構痛かったでしょう。
リスニング全体を通して
リスニングセクションの大きな変更点は上で解説した通りですが、それ以外にもっと重要な変更点がありました。それは『ナレーターの増加』です。以前はアメリカ英語のみのナレーションだったのですが、この改訂からイギリス・カナダ・オーストラリア(ニュージーランド)のナレーターが登場したのです。
現代のグローバル化に合わせて、アメリカ英語だけが英語なのではないという趣旨で導入されたのだと思われますが、日本で中学校からひたすらアメリカ英語を教えられてきた人間にとっては、これは結構キツかったのではないかと思います。管理人もTOEICに初めて受験した頃、あのイギリス人のおばさんナレーターの訛りが非常に聴き取りにくかったのを今でも覚えています。
ただ、現実問題として、いまの地球では英語が共通語となっている以上様々な英語が話されるので、それに対応する力を付けるという意味ではTOEICもグローバル化することは大変良いことであると思います。ことTOEICに関していえば、あまりにきつい訛りは避けられていますし、これくらいはこなさないといけないのかもしれません。
オーストラリアのナレーターも実際の現地の人の方がよっぽど訛っています。その辺りはさすがナレーターだなと思います。
リーディングセクション
Part5
【問題数】40問→40問
【変更点】文法・語法問題から短文穴埋め形式に変更。
内容に関する変更は特にありません。現在の短文の穴埋め形式になりました。問題数は40問のままです。
Part6
【問題数】20問→12問
【変更点】問題数の減少
問題数が減少し、誤文訂正問題の形式が廃止され、長文の穴埋め問題に変更になりました。誤った箇所を見つけるというのは結構難しいものでした。考えれば考えるほど、それが正解に見えてくるからです。現在の長文の穴埋め形式は文法問題と長文問題が融合したような形になっていますね。
Part7
【問題数】40問→48問
【変更点】問題数の増加とダブルパッセージの登場。
問題数が多くなりました。これはPart6で減った分がここに来ました。従来のシングルパッセージに加えて、ダブルパッセージが登場しました。
シングルパッセージだけだったんだよ!!
企業の広告やウェブサイトを読んだり、Eメールの文章に言及するなど、IT化の流れを組み込んだ内容になりました。難易度自体は変わっていないのですが、明らかに読む量が増えたので、事実上の難易度は上昇したといえます。
リーディング全体を通して
リーディングに関して言えば、リスニングほど大きく変更してはいません。しかし、Part7の長文読解の問題数が増えたことを考慮すると、難化したと感じる方も多かったのではないでしょうか。現在のトリプルパッセージから考えると、ダブルパッセージなんて簡単だと思うかもしれませんが、当時はシングルのみだったわけですから、難化したと感じてもおかしくないかもしれません。
また、やはりIT化の流れを汲んでメールやホームページに関する問題が出題されることを考えると、時代の流れに即した内容になっているかなと感じます。
2016年改訂の背景
2006年の改訂後10年ぶりとなる今回の改訂にあたって、どのような背景があったのでしょうか。国際ビジネスコミュニケーション協会の2015年1月15日発表のプレスリリースに答えがありました。
TOEICテストは、グローバルビジネスにおける英語によるコミュニケーション能力を測るテストとして、1979年に第1回公開テストが実施され、2006年に出題形式が変更されました。2016年5月29日(日)の公開テストから導入される新しい出題形式には、日々変化する英語の使い方、そして世界における、日常やビジネスでの英語によるコミュニケーション方法が反映されます。変更の理由についてETSのTOEICプログラム・エグゼクティブディレクターFeng Yu氏は、次のように述べています。「英語の使い方は日々進化、変化しています。その変化に合わせて、テスト問題も進化、変化させる必要があります。TOEICテストが、現在使われている英語を反映し、そして受験者が必要とする英語のスキルを確実に測定するテストであるために、ETSでは、この度TOEICテストの出題形式を一部変更してまいります。」
出題形式の一部は変更されますが、調査を繰り返し実施し、TOEICスコアの持つ意味が、出題形式の変更前後で変わらないことが検証されています。また、テストの難易度やテストの実施時間にも変更はありません。変更された出題形式は、2016年5月に韓国と日本で実施されるTOEIC公開テストから導入される予定です。
引用元:国際ビジネスコミュニケーション協会
重要箇所をハイライトさせて頂きました。
英語というのは、紛れも無く言語なわけですが、言語というのは時代に合わせて少しずつ変化していきます。従って、その変化に合わせて英語資格試験も随時変化していく必要があり、TOEICもその必要に迫られたということです。
特に、言語に限らず、このここ15~20年はIT技術の発展によって爆発的に世界が成長してきたこともまた事実です。IT技術が変われば,ツールとしての英語も当然変わります。
例えば、ビジネスシーンにおいても、今までは手紙でやりとりをしていたのがメールになったり、はたまたオンラインチャットのようなものになったり、というように使用形態が異なってきます。実際のビジネスの場でも、以前よりも短くてシンプルなプレインイングリッシュを使うのが最近のトレンドであり、ビジネスレターやファックスに比べて全体の文の長さが半分くらいまで短くなっています。従って、改定前の形式には無かったスピーディーで円滑なコミュニケーションというものを取り入れる必要性をETSは感じていると言えます。
TOEFLや英検のようなある種アカデミックな内容が問われる試験であればあまり変更する必要はありません。珊瑚の減少や森林伐採などの生物関連のネタや、輸血や脳死といった医療技術ネタがコロコロ変わることは無いからです。しかし、ことビジネスに関していえば、移り変わりの激しい業界ですから、そのビジネスに特化している内容のTOEICは時代に応じて柔軟に変わっていかなければならないということです。
実際の変更点
リスニングセクション
Part1
【問題数】10問→6問
【変更点】問題数の減少
Part1の写真描写問題ですが、なんとこのタイミングで6問にまで減少してしまいました。最初が20問あったことを考えると、当初の4分の1近くになってしまっています。それだけ簡単な問題であったということですが、得点源にする人が多かった場所でもあるので、特に初心者に人にとっては痛手でした。
Part1がどうして簡単かというと、出題される文章における単語が極めて限られているからです。写真を見た瞬間に、どのような文章が読まれるか予想が付きますし、Part1のみに使われる動詞や名詞があることから、非常に対策が楽であると同時に、最も点数が伸びやすい部分だからです。
従って、多くの人が正解するようになってきたおかげで問題数は減りました。現在は、引っかけのような出題も多くある(その表現かよ!みたいな)ので余計に注意が必要です。
Part2
【問題数】30問→20問
【変更点】問題数の減少
Part2に関しては、巷の対策本で『最も簡単にスコアが上がる』とされています。管理人は絶対にPart1だと思っているのですが、ありとあらゆる教材が一番最初にこの『Part2』の対策を勧めます。理由としては、最初の所謂『出だし』に注目して聴いていれば、全体の内容が分からなくても正解できることが多いからです。つまり、テクニックでカバーできる部分が多いということです。
この部分が減ってしまったことによって、今までPart2をテクニックでカバーしていた人にとっては痛手となったことは間違い無いと思います。ただ、最近はこのテクニックも通用しなくなってきており、聞かれたことに対して間接的に応える『そらし』が流行っています。
Part3
No. 32 Why is the woman calling?
(A) To cancel an order
(B) To complain about a product
(C) To redeem a gift card
(D) To renew a warranty
No. 33 What does the man ask the woman about?
(A) A model name
(B) A brand of coffee
(C) A catalog number
(D) A date of purchase
No. 34 What does the man offer to do?
(A) Provide a discount
(B) Send a free sample
(C) Extend a warranty
(D) Issue a refund
引用元:TOEIC公式サンプル問題)
【問題数】30問→39問
【変更点】問題数の増加と難易度の大幅上昇
恐らく、最も変わったと言えるのがこのPart3ではないかと思われます。まず、今回の変更で問題数が旧形式の30問(10の会話)から、39問(13の会話)に増えただけでなく、内容にも大きく変更点があります。文章全体が理解できていないと解けない問題が追加され、ネイティブが良く使用する短縮系も追加されるようになりました。
・3名で会話する設問があります。
・Elisions(省略形: going toが gonnaなど)、 Fragments(文の一部分: Yes, in a minute; Down the hall; Could you?など)を含む会話が流れます。
・会話やトークの中で聞いたことと、問題用紙に印刷された図などで見た情報を関連づけて解答する設問が加わります。
・会話やトークの中で話し手が暗示している意図を問う設問が加わります。
引用元:国際ビジネスコミュニケーション協会プレスリリース
上記のプレスリリースを正に体現してくれているのがこのPart3であるといって良いでしょう。具体的には変更点として、以下の3つが挙げられます。
①3人での会話
旧形式では必ず男女2人が交互に順番に話すという内容のでした。しかし、新形式では約3分の1の問題が3者間の会話に変更となっています。(上記サンプル問題は2人)しかも、話す順番は完全にランダムです。従って、良く聴いていないと誰が何を喋っているのかが分からなくなる可能性があります。
つまり、それぞれの話者の声質とアクセントに注目し、判別していかなければなりません。
② 図表のついた設問
No. 41 What does the woman ask the man to do?
(A) Order some equipment
(B) Find a new vendor
(C) Repair a laptop
(D) Contact a job candidate
引用元:TOEIC公式サンプル問題
実際に、このように図表を使って出題されるようになりました。このことによって、制限時間内にグラフや表を読み取る必要が出てきました。この読み取りに気を取られていると、完全に音声を聴きな流してしまうので要注意であるといえます。
③話者の意図を問う問題
このように、会話やトークの中で話し手が暗示している意図を問う設問が加わります。
良くある例
What do the man imply about…? (男性たちは~について何をほのめかしているか?)
Why does the woman say, “xxxxxxx”? (女性はどうして「~」と言っているのか?)
といったように出題されます。つまり、単純に英語を聴き取れるのみならず、ちゃんと意味まで理解するとともに、相手のニュアンスや意図までしっかりと汲み取れる力が試されるようになりました。
要するに、以前は『どこで』『いつ』『目的は?』みたいな単純な質問が多かったわけですが、新形式になってからは『なんでこの男はこう思ったの?』『何でこの時彼女はこんなことしたの?』みたいな問題が増えるわけです。英語力も大切ですが、国語力も要求されるのです。
Part4
No. 71 What does the speaker say about the repair?
(A) It is not required.
(B) It has been finished early.
(C) It will be inexpensive.
(D) It is covered by a warranty.
No. 72 When can the listener pick up his car?
(A) Today
(B) Tomorrow
(C) Next week
(D) In two weeks
No. 73 What does the speaker offer to do?
(A) Look for a used part
(B) Refund the cost of a charge
(C) Send an invoice
(D) Arrange a ride
引用元:TOEIC公式サンプル問題
【問題数】30問→30問
【変更点】基本的に変更は無いが、図表問題と暗示系の問題が追加された。
Part4に関しては唯一変更点が少ない箇所です。しかし、全く変更点が無いかというとそうではなく、Part3同様に図表問題や暗示系の問題が投入され、瞬時の理解が求められることになりました。結局図表も頑張って読み取らなければいけないので、いかに音声を聴きつつ、読み取りもできるかというある種のマルチタスク能力が求められているといえるでしょう。
リスニング全体を通して
今回の2016年の変更では、簡単な問題が減少したことが最大の変更点であったと思います。冒頭で説明したように、Part1が10問から6問という、ものすごい中途半端な設問数になったのが代表例です。Part1やPart2のような比較的『簡単』なパートの問題数が減少し、Part3やPart4といった、比較的『難しい』パートの問題数が増加しています。
特に、Part3と4に関して言えば、より実践的な内容に変わっており、ElisionsやFragmentsを含む会話が流れます。ネイティブが日常的に使う短縮系が使われていますし、会話全体の意味が瞬間的に把握できないと解くのが難しい問題が追加されています。従って、これまでのテクニックでカバーできる範囲が大幅に減少し、会話全体を理解するスキルが必要になってくると思われます。
また、従来であれば、設問に応じてリスニングの音声が流れるようになっており、順番に解答していけば良い(最初の設問の解答は冒頭に流れる)という状況でしたが、逆に新形式は最後まで聴かないと冒頭の設問の答えが出て来ないような問題も出題されており、そういった意味で真の英語力が問われる内容になっています。
リーディングセクション
Part5
No. 101 Customer reviews indicate that many modern mobile devices are often unnecessarily ——- .
(A) complication
(B) complicates
(C) complicate
(D) complicated
引用元:TOEIC公式サンプル問題
【問題数】40問→30問
【変更点】問題数の減少
Part5に関しては、問題数が10問少なくなりましたが、問題内容自体の変更は特にありません。簡単な問題の割合が少なくなったといって良いと思います。ただ、個人的な意見ですが、この文法問題は40問もいらなかったと思うので、30問くらいがちょうど良いのではと思います。
結局はしわ寄せが後半のパートに来るだけなので、それくらいならばPart5で40問あった方が良いという方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的には40問も文法問題やるのはだるいです。
Part6
No. 131
(A) interest
(B) interests
(C) interested
(D) interesting
No. 132
(A) develop
(B) raise
(C) open
(D) complete
No. 133
(A) After all
(B) For
(C) Even so
(D) At the same time
No. 134
(A) Let me explain our plans for on-site staff training.
(B) We hope that you will strongly consider joining us.
(C) Today’s training session will be postponed until Monday.
(D) This is the first in a series of such lectures.
引用元:TOEIC公式サンプル問題
【問題数】12問→16問
【変更点】問題数の増加
Part6は4問増加しました。旧形式は本当に文法問題であるPart5の延長のような位置付けだったのですが、新形式になってからは、単語や句を投入するだけでなく、丸々一文を入れる問題が追加されました。このことによって、以前は問題の意味を把握しなくても、前後だけを見て判断すればそれで良かったものが、問題文全体を理解しないと当てはめられないケースが多くなりました。
従って、現在はPart6に関しては最初から全部読んでしまうのが得策であると思います。あとになって『あ~これあかんわ、全部読まなあかんわ汗』となってしまうと時間の無駄であるからです。
Part7
No. 196 In the advertisement, the word “top” in paragraph 1, line 2, is closest in meaning to
(A) maximum
(B) favorite
(C) important
(D) upper
No. 197 What are Sparky Paints customers advised to do?
(A) Apply an adhesive to color samples
(B) Visit a store to compare paint colors
(C) Adjust the color on their computer monitor
(D) Order samples of several similar colors
No. 198 What is most likely true about order #3397 ?
(A) It arrived within two business days.
(B) It included an extra sample.
(C) It was shipped in February.
(D) It contained four gallons of paint.
No. 199 Which color does Mr. Phan indicate that he likes?
(A) Caspian Blue
(B) Deep Sea Blue
(C) Stormy Blue
(D) Misty Gray
No. 200 What problem does Mr. Phan mention in his e-mail?
(A) He received the wrong item.
(B) He was charged the wrong price.
(C) The delivery time was too long.
(D) The instructions were too confusing.
引用元:TOEIC公式サンプル問題
【問題数】48問→54問
【変更点】問題数の増加とチャット形式の問題の追加及びトリプルパッセージの登場
最後の難関といっても良いこのPart7。新形式になって、問題数が6問増加し、3つの長文を読んで内容を問われる問題(トリプルパッセージ)が追加されています。また、iPhoneをはじめとするスマートフォンの普及に合わせて、チャット形式の文章が必ず出題されるようになりました。
つまり、登場するパッセージの数が、改訂ごとに1つ→2つ→3つというように増加していっているのです。旧形式であれば、ダブルパッセージまでで済んだところ、新形式になってからは3つの文章を比較して答えを探さなければならないのです。
このトリプルパッセージを苦手としている方が非常に多いですが、私もその一人です。毎回のごとく、管理人はこれを『ウォーリーを探せ』であると言っていますが、どこに答えが書いてあるのかを瞬時にキャッチするのが非常に難しいのです。これは得意不得意あると思いますが、私はどちらかというと苦手です。問題も、意図的に分かりにくい所に解答のヒントを隠してあるので、間違い探しをやっている感覚に非常に似ています。
ただ、そうはいっても文章の難易度的には難しくありませんし、解答のヒントとなる箇所をキャッチできてしまえば、芋づる式に正解できてしまうのが良い所でしょう。また、スマホ等のチャット形式の問題に関しては現代らしくて馴染みがあるので好きだという意見が多いのが特徴です。
リーディング全体を通して
リーディングセクションも,比較的点を取得しやすいPart5が大きく減少し,点の取りにくいと思われるPart6・7が増加しています。Part6に関して言えば,文全体の挿入問題が追加されており,ここでかなりの時間を取られるようになってしまいました。Part7もパッセージの数が増え,大量の文章を限られた時間内で読まなければならないようになっており,正に時間との戦いになっていると思います。
傾向としては,やはり日本人全体の英語力とその意識が少しずつ上がってきたということで,より実践的な問題形式になっていると思います。また,英語力そのものというよりか,『いかに短時間で必要な情報をキャッチできるか』という,ある意味で情報処理能力に近い内容になってきていると感じています。
これが良いのか悪いのかは議論があるところですが,少なくとも現状のTOEICはそのように進化していっているということです。
変更による影響はあるのか
新形式への移行による影響は何かあるのでしょうか。国際ビジネスコミュニケーションのプレスリリースでは以下のように説明されています。
変更による影響
出題形式の変更後もTOEICテストは、日常生活および職場環境で使用される英語力を評価する、公正かつ妥当な、そして信頼できるテストであることに変わりはありません。TOEICテストの全体的なクオリティや難易度、テストの実施方法にも変更はありません。
公式認定証のリスニングのAbilities Measured(項目別正答率)に、「フレーズや文から、話し手の目的や暗示されている意味が理解できる」という項目が新たに追加されます。これ以外には公式認定証に変更はありません。新たに追加される項目は、受験者とスコア利用者に受験者の能力に関する更なる情報を提供するものとなりますが、総合的なスコアには影響しません。 そして、今まで通りスコア同士を比較することも可能です。
以上のように、運営当局としては難易度に変更は無いという見解示しています。確かに、実施回数や試験時間などには変更はありませんし、ハード面は何も変わっていないと言えるでしょう。
しかし、難易度に関してはどうでしょうか。上記に記載の通り、難易度には変更が無く、総合的なスコアには影響しないという立場のようです。これは本当でしょうか。たしかに、総合的な結果としての『スコア』には相違が無いとしても、難易度が変わらないということに関しては疑問が残ります。
事実上『難易度』という側面から考えると明らかに難しくなっているからです。次にこの点を考察してみましょう。
新形式への移行は難化だったのか
さて、ここまで過去2度の改訂を詳細にわたって解説してきましたが、果たしてこれは難化だったのでしょうか。プレジデントオンラインにも記事がありました。
新傾向になって得する受験者と損する受験者はいるのか。ETSの公式見解によれば、変更後のテストと現行のテストの難易度は変わりなく、たとえば現行の形式で600点を取っていた人なら、改訂後の試験でも同様に600点程度になるはずだとしている。
とはいえ、人によって得点源としていたパートが違うはず。パートごとの問題数の増減がスコアに影響するのではないだろうか。元商社マンで国際ビジネスの最先端を経験した花田徹也氏は「パート1、2、5を主な得点源としてきた受験者や文脈をとらえるのが苦手な受験者には厳しくなる」と指摘。
引用元:プレジデントオンライン
全く同感です。理由は簡単なPartが確実に減少しているからです。従って,小手先のテクニックに頼り,Part1・2・5辺りでちょこちょこと点数を稼いでいた方にとっては紛れもなく『難化』であると感じます。
一方で、全体的に文脈依存型の問題が増える。清涼院氏によれば「解答テクニック先行で抜け道を探してきたような人は苦戦を強いられるかもしれない」という。「逆に基本を疎かにしないで、地道に学習してきた人にとっては何の心配もない」と断言する。
引用元:プレジデントオンライン
管理人が大学時代でお世話になった英語教員の方も同じことを言っていたのを思い出します。『TOEIC』の勉強ではなく『英語』の勉強を真面目にしっかりやってきた人にとっては何も問題は無いということです。上記でも述べられているように,基本ができている人間にとっては,そこまで悲観する必要はないのではないかと思います。
このように、TOEICは日本でビジネス英語の実力を測るテストとして幅広く採用されてきましたが、従来の出題形式だと特有の解き方(テクニック)さえ身に付ければある程度の点数アップが可能だったわけです。いつからか『TOEICの点数では実際の英語力を測定できない』と言われるようになったのもこの『テクニック』主導の対策が原因であると言われています。
実際に多くのTOEICスクールやTOEIC講師が『解答に直結する部分だけ読む』『同じ単語が聞こえたら不正解』というような本質からかけ離れている指導を行っていました。しかし、新形式のTOEICでは、そのような小手先のテクニックが通用しなくなり、会話の文脈や所謂『空気を読む』といった暗示型の問題が出題されるようになりました。
従って、難化しているのは事実であるが、まともに『TOEIC学習』ではなく『英語学習』をやってきた人間にとっては難化の影響は受けにくいということです。つまり、あまり気にしても仕方が無いと言えるでしょう。
別に難化を気にする必要は無い
重要なことは、難化を気にする必要は全く無いということです。もっと言ってしまうと、どれだけ難化しようがあまりスコアには変化が無いと思います。そういう意味で、当局の発表している『総合的なスコアには影響しない』というのは正しいのです。
理由は、皆さんもご存知、単純にTOEICが素点処理で点数を出しているわけではなく、統計学上のデータに基づき、常に回りの人間との相対評価でスコアを算出しているからです。従って、100%の正解率ではないのに満点が出る理由もここにあります。素点処理では無いということは『単純に難しくなると点数が下がる』ということでは無いのです。
難しくなればなるほど、自分も解けなくなりますが、同時に『周りの人間も解けなくなってくる』ので総合的なスコアの算出には影響が無いのです。それに、小手先のテクニックを皆が使い、英語が分かっていないのに正解を出してしまうので、本来の英語力を測定するという趣旨からだんだん外れてきてしまった結果、当局も『そらし』を入れたり、『ニュアンス問題』を出したりして対策をしなければならなかったのです。
従って『新形式になって難しくなった』はある意味正解で、管理人も同感です。確かに難しくなっていますし、読む量が段違いに増えています。しかし『新形式の「せいで」スコアが下がった』というのは的外れで大きな間違いであるということです。
実際にアルクが行った調査でも、新形式と旧形式でスコアには差がほとんど無いという結果が出ています。
(引用元:アルク TOEIC(R)テスト新旧スコア比較アンケート調査)
今回の調査のモニターの平均点が832点とかなり高めの方を集めていますが,やはり高得点を取っている人ほどあまり影響しないと思われます。
問題作成者の意図とは
結局のところ、TOEICというテストの原点的な話になってしまいますが、問題作成者としては、やはり『英語ができる人』に高得点を取って欲しいという意図が伺えます。確かに、『先頭の言葉だけを聴いて、あとは分からないけど正解!』みたいなのは、スコア的な観点からみればそれで良いのでしょうけれど、出題者からすれば『そりゃないよ~ちゃんと聴いてよ』ということになります。
巷にそういったテクニックが広がれば広がるほど、そういった小手先の技で正解する者が増え、結果的にTOEICという試験の『信頼度』が下がってしまうことに繫がってきます。だからこそ、出題者は何とかして『理解している者』に正解を与えようと研究をしているのです。これはTOEICに限った話ではなく、センター試験等でも同じことです。ですから、時代の流れに合わせて出題形式を変更していくことは『TOEIC自体の価値』を維持することに直結するため、運営元もそうせざるを得ないのです。
今後も世の中の流れとともに、改訂されることは十分に考えられそれが1年後かもしれませんし、5年後・10年後かもしれません。大事なことは、出題者の意図をしっかり考えながら毎日学習していくことなのではないかと思います。
まとめと私見
いかがでしたでしょうか。
今回は『旧形式と新形式TOEICの違いとは!?過去2度の改定を経た問題形式を徹底比較!問題作成者の意図とその隠れた秘密に迫る!!』というテーマでお話をしました。本記事で時間をかけて改訂について言及したのには訳があり、それは試験を攻略する上では、その試験について詳しくなければならないと管理人が常に感じているからです。
どういうことかというと『生粋の帰国子女で最初から990点!』みたいなレアケースはさておき、血の滲むような努力で満点を勝ち取った多くの方々は、きっと自分なりに研究と考察を重ねてきています。満点を取得したその時は、TOEICに関してもはや愛着を感じるようなレベルになっていることと思います。
彼を知り己を知れば百戦殆からず。
彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。
彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆し
『孫子・謀攻』 / 孫子
使い古された言葉かもしれませんが、まさにこの通りで、どのような経緯で難化しているのか、どうしてここの問題が増えているのか、どうしてスマホのチャット画面の問題が出題されるようになったのかということを常に考えながら対策を行えば、きっとスコアも上がってくると思っています。それに、そういった『出題者の意図』を考えて日々勉強することは、これからの時代を予測する力にも繫がり、未来の対策ができるということにもなるのです。『時代の流れを読む』というのは1つのスキルであります。過去を一瞥し、大体未来がどのようになるのかということを推測するのはそこまで難しいことではありません。
まとめると、今後は真の英語力が求められるようになり、日頃からしっかりリスニング及びリーディングを『理解』して勉強することが求められるでしょう。すでに小手先のテクニックは通用しなくなりつつあるので、着実に、かつ手堅く英語学習をしていく必要があります。
単純にスコアが上がればそれで良い、英語力はどうでも良い、英語力よりスコアだという人はそれはそれで良いのですが、逆に言ってしまえば、スコアだけを目的にしてTOEICの勉強をするというのは『人生の無駄』に他ならないと言えます。最終的な目標はTOEICマスターになることではなく、英語をツールとして活用できるようになるということだと思います。短期的に、昇進や就活、進学等の理由でスコアの獲得だけに走るのは良いと思いますが、長期的なスパンで見た時にはスコアを追い求めても、本質は見つからないという結果になります。
さらなる改訂に伴う難化も有り得ます。その時のためにしっかり備え、日頃から真面目に努力していくことが先決であると感じます。あくまでも、スコアは『後から』追いかけてくるものだということです。追いかけてはいけないのです。
今回の記事が皆様のお役に立てば幸甚です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
【最後に】TOEICを頑張るあなたにオマケ情報!
TOEICは楽天ポイントで決済できるって知っていましたか?
年会費永年無料の楽天カードを入手して楽天ポイントを貯めることで実質無料で受験ができます。
玄人はもうTOEICにお金を払わずに受験しているのです。
あなたは毎日の支払カードを「楽天カードに集約するだけ」で、まるで魔法がかかったかのように今後TOEIC一切お金は必要無くなります。