皆さんこんにちは、管理人です。
本日は、『英語教師の英検準1級保持者の割合から考察できる日本の英語教育事情について』というテーマでお話しようと思います。今回は気分を変えて論文形式で書いていこうかと思います。
少し前の話題になってしまうのですが、文部科学省が平成30年度の『英語教育実施状況調査』の結果を発表しました。本調査は『第2期教育振興基本計画』(平成25年6月閣議決定)において、高校生の英語力や英語担当教員の英語力の目標を成果指標として具体的に示しています。また、中央審議会でとりまとめられていた、学習指導要領の改善について所謂4技能を総合的に伸ばす科目の設定について提言されています。
目的は、現在の英語教育における具体的な施策の状況について把握することで、今後に活かすとともに各教育委員会における英語教育の充実や改善に役立てるためというものです。『教育復興基本計画』や『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』などにおいて、生徒の英語力の目標設定や検証を通じた改善等において提言がなされたことを受けて2013年より実施されている調査になります。調査対象は、全国のすべての公立の中学校・高校になっています。
さて、『第2期教育振興基本計画』では、英検準1級程度以上 (CEFR B2レベル以上)を取得している英語担当教員の割合を75%以上を目標としています。CEFRのB2レベルとは何なのかという話ですが、Common European Framework of Reference for Languages(ヨーロッパ言語共通参照枠)のことで、セファー(セファール)と読みます。ヨーロッパ全体で外国語の学習者の習得状況を示す際のガイドラインとして策定されたもので,習熟度に応じてA~Cの3つのレベル群があり、それぞれが習熟度の低い順にA1・A2のように2レベルに分割されます。
簡単に言うと、A→B→Cの順にレベルが高くなっていくものです。Bレベル群は『自立した言語使用者』として認められ、B2は『実務に対応できる者』や『準上級者』と称されます。『お互いに緊張しないで母語話者とやり取りができるくらい流暢かつ自然なレベル』と言われています。分かりやすく日本の英語検定試験と比較する、英検では準1級、TOEFL iBTでは72~94点程度かなぁと思います。TOEICに関しては、4技能の測定ではないので厳密に比較することは難しいのですが、だいたい730以上であると言われています。
では実際に平成30年度の高校教諭の結果を見てみましょう。
次に平成29年の高校教諭の結果もみてみましょう。
次に28年度です。
さて、以上がここ直近の結果なのですが、一番最近の平成30年度に関しては、英検準1級を所持している先生の割合が68.2%ということで、だいぶ上がってきたかな、というのが管理人の率直な印象です。平成25年にはCEFRB2以上が50%ちょっとであったことを考えると、この4・5年で大幅に上昇していることが伺えます。
ある意味、時代の波ともいえましょうか。教員でない人間にとっても世間は英語資格ブームであり、これを例えば企業の人間でサンプルを取っても同じような数値が出るかもしれません。この調子で行けば、高校教諭に関して言えば75%も決して無理な数字ではないのではないかと思います。
しかし、残念なことに中学校教諭になると取得割合はガクンと下がってしまいます。だいぶ上がったことは事実ですが、まだまだかなぁという印象です。中学校教諭に関しては50%の目標ということで、いずれは達成できるのかもしれませんが、一応は『英語指導者』という立場から考えるとあまりにも心もとないというのが本音です。
現代は昔の時代と異なり、グローバル化が叫ばれ、教員よりもはるかに英語力のある生徒が増えてきており、それに対応するための力を教員側も身につけて武装しなければならないからです。
国語力や数学力というのであれば話は全然別ですし、その解法に関してもより多くの問題を見てきている教員の方がスキルがあって当然ですし、大学等で高等数学をやっていれば高校課程の数学など問題にならないでしょう。
しかし、こと英語になるとこの状況は一変します。悪い言い方をすれば『ただの言葉』なのですから、教師よりできる生徒もいて当然の話なのです。
『ここは受動態で、このように訳します~』という先生の発言に対し、『先生、確かに文法的にはそうですけど、実際はそうは言わない(表現しない)ですよ?』などと言われてしまうことになるのです。従って、できる限り中学の教員であったとしても極限まで英語力を上げるように努力しなければなりません。
管理人は今のところ英検準1しか持っていませんが、英語を教えるという観点からすれば、最低でも英検1級くらいの英語力が無いとお話にならないと思います。『仕事』として『This is a pen.』を教えるのであれば英検1級どころか2級もいらないわけですが、要は本人がいかに向上心を持って取り組むかということでしょう。
管理人としては、教員は死に物狂いで英検1級なりTOEIC・TOEFLなりを取得すべきであるという考えですが、ここでは分かりやすく英検でお話します。実際に英検1級を取得すると教員の方にとってはどのようなメリットが考えられるのでしょうか。
まずは、やはり教員採用試験において有利であるということです。現在働いている(既に採用されている)方であれば話は別ですが、これから英語科の教員を目指すのであれば、教採の際にその肩書きが効果を出すことは言うまでもありません。私立の教員であればほとんど企業と同じであることから、比較対象にはなり得ませんが、公立校の教員採用試験を受験する場合、自治体単位で考えても、英検1級を持っていれば試験の一部が免除されるところも多くあります。
東京都でも実技試験が免状されるなど、通訳案内士の国家資格における英検1級取得者の免除と同様なことが起こるのです。従って、1次試験と2次試験の後にある実技試験を免除されることで、精神的に楽であることは間違い無いと思います。
別に中学・高校で無っかたとしても、小学校における採用でも英語力の高い人材は優遇されるケースは多々あります。小学校では、次期学習指導要領で英語が教科化されることを視野に入れ、中学校や高校の英語教員免許を持つ受験者や英語力検定・能力試験で一定の成績やレベルに達している受験者などに対して、試験の成績を加点したり、特別枠を設けたりするなどの優遇措置を取る教育委員会が増えています。このように、英検1級ないし準1級を所持していることによるメリットはとても大きいのです。
今回のテーマは文科省の発表における英語教員が対象ですので、私立の教員は当たり前ですが含まれていません。しかし、私立の教員採用試験においても、英検1級は非常に有利に働くでしょう。企業の就職活動と同じで、自分を売るための『良い飾り』であるからです。定量的なデータから考察してみましょう。英検当局の発表では、英検1級の合格者は年間2500人ほどです。正確な数字を出す事は不可能ですが、日本全国で英検1級を保持している人の割合は1パーセントくらいかと思われます。日本人の1パーセントも持っていない資格で自分を飾れるのですから、これが面接で不利に働くことはほぼないかと思われます。
次に、なんと言っても英語力を測る指標として分かりやすいということが挙げられるかと思います。教育の現場では、生徒に対して英検を受けましょうなどと指導することも多いかと思います。その際に、英検の1級というのは生徒に自分の語学力を伝えられる良い道具であると思います。生徒から、『先生は英検何級持ってるの?』と聞かれた際に、『先生は1級を持っているよ。◯◯君も頑張ってね』と言えるようにしたいものです。
子どもは賢いですから、自分が習っている先生がどれくらいの級を持っているかを見定めてきます。また、生徒は英検の難しさは理解しているので、最高位の級を持っていることがどれだけ大変かはすぐ分かるかと思います。仮に、その生徒が英検の取得に関して意欲的であるのであれば、対策方法を教えてあげたりするなど、学習意欲の向上に繫がることも多々あるでしょう。
さて、ここまで書いてきましたが、英語の先生であるならば頑張って英検1級程度の専門性は身につけておかないとこれから先苦しくなってくると思われます。ただ、あくまでも推奨の範囲にとどまるのが現状かなと思います。というのも、実際に厳格に1級の取得を教員採用の要件にしてしまうと充足する者がほとんどおらず、人員が足らなくなるからです。
文部科学省が2013年に発表した『グローバル化に対応した英語教育改革実施計画』の中で、『全ての英語科教員について、英検準1級、TOEFLiBT 80点程度等以上の英語力を確保 』という目標が全然達成できていなかったことがメディアで話題になりましたが、現場の先生方が教員採用試験に合格した頃はそんな基準は存在しなかったので、必須条件にするのは酷かと思います。従って、今目指している方に限っては、1級をとる『つもり』で一生懸命学習に励めば良いのではないかと思います。
明らかに日本の全体の英語力が向上している現代において、教職員の英語力に関してはこれからも課題が沢山ありそうです。今後の動向に注目していきましょう!
最後までお読み頂き、有り難うございました。